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ハラル対応が進むベトナムハラル市場

ホーチミン市内


ダラットの様子ベトナムというと一見ハラルと関係ないかと思われた方も数多くいるのではないでしょうか。また、ASEAN経済統合という注目される動きが2015年と一年後に控えており、域内、域外諸国との関係はこの国にどんな影響を与えていくのか気になるところです。

ベトナムはイスラム教徒が大多数ではなく、ホーチミンはカンボジアに近いベトナムの南部に位置しています。隣国にイスラム教国がないことも日本と同じ環境であるといえます。ホーチミンからバスで陸路を辿ると、7時間ほどでプノンペンに行くことができます。また、LCCで知られるエアアジアの就航路線を見ていくと、ホーチミンの空港と繋がるイスラム教国の空港は、シンガポール、マレーシア(クアラルンプールを含む3空港)、インドネシア(メダン)となっており、アクセスとしては良好であるといえます。ハラルレストランがある程度の数見られるという情報も気になるところです。
従って、この国の調査からインバウンドのヒントやアウトバウンドのヒントが得られると考え、ホーチミンやその周辺の都市、そしてベトナム北部を見てきました。




1.ホーチミン市周辺の食料供給拠点(①野菜・②魚介類)

近海で見られる形の船ハラルの製品を製造するとしても、アイテムによっては大量の野菜や魚介類を確保しなければなりませんが、南北回廊、東西回廊でベトナムから陸路でミャンマーへと運ぶルートが構築されつつあります。そこで、ベトナムで材料を調達することを想定し、簡易的な調査をしてきました。
ベトナムの国土は細長く、東側は南シナ海に面していますが、沿岸部からカンボジア、ラオスの国境に向かうにつれて多くの高地を目にします。材料の産地として今回はベトナム南部に位置する、高原野菜で有名なダラット、海産物の豊かなニャチャンにて市場や生産地の様子に焦点を当てました。



① ダラットの農地・市場
ダラットの農地海抜1400~1500メートルとかなり高い場所に位置し、長袖を着なければならないほどに寒かったです。年間平均気温は18~23℃となっており、現地の農家の畑を回るたびに様々な作物を目にしました。高原野菜だけでなく、苺や柿といった果物、菊をはじめとする花きの栽培も盛んでした。しかし、品質や収穫量については疑問が残り、ロットの単位によっては、輸出向けに用いることは難しいようにも見えました。大都市を繋ぐ道路の状況においては、未舗装の区間や陥没が見られ、輸送中の傷みが出るものと思われます。

地元産の苺ここまで述べてしまうと悲観的に聞こえてしまいますが、期待はあります。ホーチミンのイオンでは、長野県川上村の農家がダラットで育てたレタスが販売されており、試食したものはみずみずしく、食感も良好でした。日本人農家によるベトナムでの農業への参入はこのケースだけでなく、人件費の安いこの国での農業で日本の農家が入ることで、農産物の生産・流通環境に変化が見られることと思います。そして、国内各地で行われている道路の拡幅、敷設工事はこの国の物流環境をよくするものと思われます。



②ニャチャンの海産物市場
この地域の海産物は、ASEANのその他の国と大きな違いは見られませんでしたが、朝日が昇る頃にはたくさんの漁船が海や入り江に見られ、漁業の盛んな地域らしい光景でした。屋台ではイカの入ったお好み焼きのようなものを食べましたが、生臭さもなく、鮮度の良さを感じられました。
魚介類はほとんどがハラルですが、加工する場合にはハラル認証の必要性が出てきます。認証が必要となれば、ベトナムにもハラル認証団体があるのでハラルであることの証明はできます。日本ではなく海外で安価に調達して、加工、輸出することで原価を抑えながらアイテム数を拡大してはいかがでしょうか。

オイル漬けの缶詰市場に並ぶ海産物



2.認証団体の動向(インタビューから)

ホーチミンのハラル認証マークをご存知でない方はとても多くいるかと思います。ASEANを回った中で、この認証マークを見たのはマレーシアだけであり、同マークを発行する機関のホームページも見つからないほどでした。そこで、この機関においてのインタビューを紹介することで、ホーチミンのハラル認証について明らかにしていきたいと思います。

ハラル認証の証明書パッケージおけるホーチミンハラルマーク


―――
組織の設立は1992年で、ハラル認証の発行は94年から始めています。ベトナムには同団体のほかにもハラル認証団体は、ハノイ、タイニンなど4団体あります。ハノイにある団体のみ非ムスリムの運営で、ハノイ以外は同団体を含めてベトナム政府の宗教省のもとで管理されています。非ムスリム国ということで、消費者、企業ともに認証の需要は大きくなく、まだ限られた領域のものにしか認証は出されていません。認証取得済みの企業数、アイテム数について伺ったところ、オフィスの移転中ということで資料を参考に答えることができないとの回答を受けました。

認証の対象については大きく分けて3つあり、食品、レストラン、化粧品となっています。食肉に関しては、オーストラリア産の肉の輸入が多く、国内さんのハラル肉の消費は多くありません。また、化粧品のアイテムは数点しかありません。
ベトナムのムスリム人口は約8万人で、ホーチミンは8千人程度です。そのため、輸出を目的とした認証の相談も受けており、すでにマレーシアなどに認証済みの製品が流通しています。そうした製品のメーカーなどに認証を発行する前に通関や認証が進出先の国で有効であるかといった確認を事前に関係先に取っています。
日本食レストラン、日本企業の製品、日本食のアイテムに対する認証はまだ出していません。また、問い合わせを受けたこともないので、希望があれば連絡を下さい。

今後の団体の展望について。これまでも行っていたハラルの知識を身に着けるトレーニング、そしてカンファレンスをハラル産業に関係する企業・団体そして、ハラルに関心のある方々に提供していきます。また、オフィスをリニューアルし、設備を新しくした上で、ホームページやパンフレットを作っていき、企業からの認証取得の相談などに答えていきます。(同団体担当者談)




3.ホーチミンのハラル製品の消費環境

ムスリム向けのパッケージツアーがマレーシアの会社から販売されているなど、先述したホーチミン在住ムスリム(約7,000人)だけでなく訪越外国人ムスリムもハラルビジネスのターゲットになります。ハラルに関わる飲食、飲食の数や分布はかなり限られていると調査を通して感じました。

ハラルレストランの例①※ハラルの規約を守っている店ですハラルレストランの例②※ハラルの規約を守っている店です



3.-1 飲食
まず、レストランに関してはモスクの近辺、観光スポットの多いところというものが立地環境となっていました。ムスリム観光客の方の動きを考えれば当然このようになるのだろうと予測はつくかと思います。実際に、シンガポール、マレーシア出身のムスリムの観光客とすれ違ったのでインタビューを進めていくと、これらのハラルレストランを利用しているとの回答をもらいました。
経営者視点を見ていくために、訪ねた店舗のうちいくつかのレストランにて聞き込みをしましたが、この内容は驚くべきものでした。レストラン名は伏せながらも「認証マークの利用」、「オーナーの出身国」、「使用している肉の生産国」について紹介します。


①認証マークの利用
JAKIM(マレーシアのハラル認証団体)マークの利用例は後を絶たず、調査中はいくつものそうしたハラルと思しきレストランで見かけました。店内に掲載する認証の証明書が全く見られず、ホーチミン市の認証の証明書の掲載はほとんどの店で見られました。そこからは、JAKIMの信頼や知名度を勝手に利用しているように映りました。「JAKIMマークはマレーシアなどから来る観光客にとって分かりやすく信頼があるため客を呼びやすい」ということを言うオーナーもいたほどです。決して日本ではそんな真似は試みてはなりませんが、このマークがあったためにハラルレストランを遠目から容易にみつけられたことは事実です。JAKIMマークを看板に利用するある店舗の入り口において、ビールサーバーを見たときには驚きました。非ムスリム国である以上、厳格なハラルレストランのみとは限りませんが、外国人ムスリム客にいい加減な対応をする国という誤ったイメージを持たれる可能性は日本も避けなければなりません。


②オーナーの出身国
いくつかの店舗のではオーナーがマレーシア人、シンガポール人でした。中には、出身国を含めた他国でもレストランを運営しているということでノウハウの移転がうまくできているという様子を受けました。それはメニューにも反映され、観光客が楽しみたいと思われるベトナム料理だけでなく、マレー料理があるという形でニーズを広く押さえていたのは特徴的でした。内装において自身の国を模したものが見られたことや、マレーシア人の起用は、おもてなしの意味での配慮かと思います。


③使用している肉の生産国
肉に関して、自国のハラル肉は流通上の問題からか値段が高いので、外国産を利用しているという声を聞きました。



ケバブの屋台ハラル肉と話が変わり、場所はベトナム北部のハノイ、ハイフォンでの調査と余談になりますが、ドネルケバブがとても印象に残りました。ケバブというと、羊肉や鶏肉をパンにはさんで食べる形の料理ですが、ここでは豚肉が使われていました。もちろん販売する屋台にハラルマークはなかったのですがそこで疑問が抱きました。マレーシアでは、認証を掲示していないイランレストランなどでケバブが販売されながらもムスリムの客がたくさん来ているのを目にします。そこは料理がイスラム教国のものであること、店員がそうした国の出身者ということが背景にありますが、自国でハラルとして慣れ親しんだものが渡航先のレストランでハラムであるとどう気づくでしょうか。これらの屋台では英語が通じず、ポークやチキンなどと言っても首をかしげるほどでした。少し話していると「ピッグ」と言われ、豚肉と分かったものの、材料確認の難しさを感じた体験でした。インドネシアやマレーシアで人気な鉄板焼きは、日本でハラルでしょうか。それを訪日観光客が日本語や英語を使えなければ知る由もありません。ハラルと同時にハラムを示すこともムスリムの観光が全国に広まる中で必要になる対応かと思います。



3.-2 小売
ハラル商品に力を入れて取り揃えをした小売店は今回の調査では見つかりませんでした。缶詰やカップラーメン、油といった製品領域においてはホーチミンの認証を確認できました。フランスから入っている製品においてハラル認証は確認できませんでしたが、同国のブランドのチーズは屋台、商店、スーパーなどで見られたことに驚かされました。乳製品で言うと、ニュージーランドの認証付きのハラル製品が流通していました。飲料、アイスクリームのカテゴリーにおいては、タイ、インドネシアのハラル認証付きのものが多く、ASEAN諸国においてこの傾向は広くみられるために流通において、両国の強みがあることが背景にありそうです。ハラル認証付きだからといってもムスリムだけがターゲットではなく、その他の一般消費者に購入、消費されている光景は日常の中で目にします。

各地にある小さな商店日系の大型ショッピングセンター




おわりに

ベトナムについては、特にレストランのことが勉強になりました。ホーチミンでは観光地のレストランがハラル対応をしていましたが、そこでのメニューは現地・ベトナムのものだけではなく、他国の料理も扱うというものです。日本ではまだハラル対応の日本食料理店の数が少ないのであれば、国内のイスラム圏の料理を出すハラルレストランを販売チャネルとして活用するのはいかがでしょうか。こうすることで、訪日ムスリムがハラルのレストランで日本のハラル食品を味わえます。また、メニューとして盛り込むことだけでなく、お土産に買っていくといったことは、ハラル製品を持つメーカーさんにとってムスリムの消費者の方々に製品を提供するいい場になるかと思います。
ベトナムをハブにハラル製品を供給することは今回の視察では見通しが立ちませんでしたが、今後の動きによっては何か変化があるかもしれません。


(文:神奈川大学学部生、三代澤誠)




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