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スリランカレポート

ゴール旧市街 【ゴール旧市街】


スリランカというと最近は南国のリゾートのような形で旅行のプランやガイドを見るのではないでしょうか。同時に、投資家やビジネスマンが気になる大型事業や外資系企業の新規参入を取り上げた番組をテレビで目にした方も多いのではないでしょうか。




この国は、インドの最南端の東側、インド洋に面しています。6~8%の経済成長が4年も続き一人あたりGDP が既に3,000米ドルを超えており、同約1,500米ドルである大国インドをしのいでいます。国民の約70%と大多数が仏教徒であり、イスラム教徒は10%と少数の構図ですが、この国でムスリムはどのような生活を送り、どのようなハラル製品を購入しているのかを調べてみました。

南部の都市のモスク 【南部の都市のモスク】





2009年に26年に及ぶ内戦が終了したこの国が注目される理由としてはいくつかありますが、そのうち3点に注目しながら観察を進めてきました。それは、
①海運におけるインドへの物流の出入り口
②今後の経済発展の可能性
③スリランカのハラルの現状と展望
です。

コロンボの市街 【コロンボの市街】





海運におけるインドへの物流の入り口

商業都市コロンボがスリランカ最大の取扱量を誇ることから分かる通り、港にはいくつものガントリークレーンが立ち並び、高く積まれたたくさんのコンテナが目に入りました。また、国内を視察する中でも多くの大きな道路で工事が行われる光景を目にし、物流の整備が加速していることを感じました。今年の4月には中国企業によって、コロンボ港のコンテナターミナルの建設プロジェクトが竣工され、南アジア最大級の深水埠頭かつ、同地域一帯のハブ・ポートとなります。

コロンボ市街から見た港湾部
図4:コロンボ市街から見た港湾部





同社の資料(左)、独自にハラルマークを付けたレストランの弁当のふた(右)街中のモスクの紹介のもとで訪ねたスリランカの認証機関で、数年に一度展示会も行っているHAC(Halal Accreditation Council)におけるインタビューでは、様々な疑問点を伺いましたが、特に気になるハラル物流の件について紹介します。現在、認証機関が把握している範囲では、陸運・海運ともにスリランカではハラル物流は物流企業によってほとんど行われていないとのことです。理由は主に、コンタミネーション(「ハラル」のものと「ハラム」(イスラム教徒にとって許されていないもの)なものとの混合でハラルなものがハラルでなくなること)が発生すること、現状でのハラル製品の流通量が多くないことが挙げられました。しばしばハラル関連の事業の例で取り上げられるマレーシアやシンガポールなどではハラル物流は一般化していますが、ハラル産業が形成されつつある中でチャネルを繋ぐ役割である物流の形成・最適化は、ハラル製品の生産地としての役割を想定すると大きな課題になりそうです。





今後の経済発展の可能性

大きなスーパーは、コロンボを広く見回りましたが見つかりませんでした。小売業においては、一人当たりGDPが2,000米ドルを超えるとスーパーマーケットが発生し、3,000米ドルでコンビニエンスストアが発生するといわれている分、そうした業態の小売店が見られなかったのは意外にも思えました。主要産業は、安価な労働コストを生かした紅茶やゴムを主とした農業そして、繊維業です。経済の発展の遅れもあり、広い領域におけるサービス業が発達していませんが、観光業は政府が力を入れている産業であり、2009年秋以降急増している外国人観光客の増加とともに娯楽などの関連産業に波及していくと思われます。その他、化学工業、金属工業にも投資の波が来ています。

コロンボに拠点を構える外資系金融機関茶器で有名な日系のブランド




国内南部の海岸近くで見つけたハラルレストランでは多くのムスリムが食事をしていましたが、在住ムスリムや観光に来たムスリムの方に対するサービスもまだまだ不足気味に見えました。街中の書店で見つけた書店はロンリー・プラネットの日本版を扱っていましたが、版が古く、ケータイが民間に広まる前の時代の日本が写真にはありました。所得の問題が特に大きいこともありますが、まだ日本への観光が普及するにはとても時間がかかりそうです。
同ハラルレストランでの食事 【同ハラルレストランでの食事】


ハラル関係のビジネスを行ううえで注意すべき要因として、仏教系の人間によるイスラム教徒へのテロが挙げられ、経済の情報ばかり追ってしまうと思わぬところで影響を受けるかもしれません。





スリランカのハラルの現状と展望

街の中の商店を観察しましたが、コロンボをいくら回ってもハラルマークはあまり見つからず、代わりにベジタリアンマーク(緑)、ノン・ベジタリアンマーク(赤)を付けたものを目にしました。そこからは、一定数のベジタリアンを擁するインドとの深いつながりを持つスリランカのニーズを感じました。ベジタリアンも厳格な方とそうでない方がおり一概には言えませんが、弊会代表理事の佐久間が言うように、ベジタリアンフードは肉を含まないなどの理由からハラルへの応用の可能性の高いものです。ハラル製品だけでなく、ベジタリアンにも対応することで多くの方に日本の食品を届けることが可能になります。

ベジタリアンマーク付きの商品 【ベジタリアンマーク付きの商品】





ハラル製品については全く売られていないわけではなく、コロンボとは異なる地域の都市部にある小型のスーパーや国内南部のムスリムの多い地区の商店ではある程度の数の製品が棚にありました。
前者の小型スーパーでは、肉を初めとした商品のハラル認証マークが確認できましたが数は多くなく、後者の店舗においてはその数はさらに減り、スリランカハラル認証付きは、オイスターソース、パスタ、チョコ、その他の認証付きはタイ認証のレッドブルに留まりました。

近代的な同スーパーハラルミートのパッケージ
ハラルのオイスターソース




コロンボの中心部認証団体へのインタビューの際、まだハラル認証の製品が少ない上に、展示会も毎年定期に開催するには至っていないということを教えて頂きました。また、レストランなども含めて、これからのハラル認証製品の増加が見込まれ、SAARC(南アジア地域協力連合)加盟国との関係は貿易にハラル産業においても重大な要因であるといったことも話の中で触れられ、担当者の話にも熱が入っていました。





スリランカの日本料理

スリランカの日本食料理店を訪ねて料理を実際に食べました。ハラル認証を持ったお店ではありませんでしたが、現地の人間をシェフに雇いながら料理を提供する姿はマレーシアなどに見るハラルの日本食レストランにとても近く、メニューは寿司や丼物で構成されていました。食材の品質や味の確認をするためにいくつか注文しましたが、親子丼は特に卵、鶏肉の味が良く日本の味に慣れた私でも美味しいと思いました。日本食に必要な食材のほとんどは調達が可能と思われます。

同店の親子丼 【同店の親子丼】





食事に行ったのは金曜日の夜でしたが、来店時の顧客層は日系人が2割でその他は近隣の外資系の企業に務めていると思われる人々などでした。提供された日本食の味やメニュー構成は、日本にある日本食料理店とほとんど変わらなかったことから、日本食の「現地適応」は見られませんでした。レストランが南アジアに適応したハラルの日本食を作りだす手がかりを期待しましたが見つかりませんでした。想像に難くはありませんが、南アジアのこの国において、日本食は一般国民に親しまれているといった様子は見えませんでした。

コロンボの市場ローカルのレストランで出された食事





おわりに

この国をこれからの「生産地」として捉えるか、あるいは「輸送の経由地」、「消費地」とするかなどと様々ポジションがありますが、進出による可能性を大いに秘めた国との実感を受けました。仕入れ元は、まだまだ多様化していませんが小型スーパーが構えられるほどに発展しています。内戦の終結という大きな転換点から、様々な場所でビジネスが成長を遂げています。ベジタリアン向けの食品という、難しい制約のもとで開発されてきたものはこれから他国の市場機会を狙う武器になりうる上に、ハラル製品の開発のヒントが隠されているかもしれません。

(文:神奈川大学学部生、三代澤誠)


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